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【保存版】イチゴ促成栽培のメリット・デメリットと成功ポイントを一挙紹介

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こんにちは、大田です。

本日は、イチゴ促成栽培の大まかな流れや特徴、そして実際に栽培に取り組むうえで知っておきたいポイントを見ていきます。

冬の需要期を狙って高付加価値のイチゴを生産するのが促成栽培の大きな魅力ですが、同時に設備投資や技術的ハードルなどの課題もあるため、メリットとデメリットの両面を理解したうえで計画を立てることが肝要です。

では、さっそく内容を見ていきましょう。

目次

1. 日本国内で主流となっているイチゴ促成栽培とは

イチゴ促成栽培とは、本来は5~6月頃に収穫を迎えるイチゴを、秋から冬にかけて花芽を形成させ、ビニールハウスなどの施設内で温度や湿度、日照量を管理することによって、冬から春にかけて収穫する技術です。

日本のイチゴ市場は、クリスマスやお正月といった年末年始の需要期が非常に大きいため、このタイミングに合わせてイチゴを出荷することで、高い市場価格を得やすい特徴があります。

もともとイチゴの花芽は、短日・低温期に分化する性質があります。

そこで夏場の段階から花芽形成を誘導するために「山上げ」や「短日処理」「冷蔵処理」などの方法を用い、秋には苗がしっかり花芽を持った状態で定植します。

その後、ハウス内を加温・換気して適切な温度帯を保つことで、11月頃から翌5月頃まで長期間にわたってイチゴを収穫できます。

雨や霜などの影響を受けにくいこともあり、品質の高いイチゴを安定生産できる点が大きなメリットとなっています。

2. 高単価を狙える秘密! イチゴ促成栽培の特徴

イチゴ促成栽培の大きな特徴としては、冬場の最需要期(クリスマスや年末年始)にイチゴを出荷できることが挙げられます。

特にケーキや贈答品で用いられるため、この時期の市場価格は高めに推移しやすいのです。

さらに、ハウス内で生育環境をコントロールできるため、イチゴが本来苦手とする低温や多湿をある程度回避できます。

結果として、形が良く美しいイチゴを作りやすく、付加価値の高い商品として販売できる可能性が高まります。

また、秋から春にかけて連続的に花が咲き、実が成り続けるため、11月頃から翌年5月頃まで収穫を続けられます。

収量が長期にわたって確保しやすいのは経営上の安定にもつながり、短期間に収穫が集中する露地栽培とは違った収益サイクルを築けるのも促成栽培ならではの魅力です。

ただし、密閉されたハウス内は病害虫が発生しやすいリスクも高く、きめ細かな観察と早期対応が必要となります。

3. 本当に儲かる? イチゴ促成栽培のメリット・デメリット

ここでは、イチゴ促成栽培に取り組むうえで知っておきたいメリットとデメリットを整理してみます。

促成栽培がもたらす恩恵と、抱えている課題を両方把握したうえで、自分の農業スタイルや地域の特性に合った導入を検討してみてください。

【メリット】

● 冬期高単価による収益性の高さ

イチゴ促成栽培の最大の魅力は、何と言っても冬の高単価時期に出荷できる点です。11月末から2月にかけてのイチゴは、市場価格が通常期の2~3倍に達することも珍しくありません。実際、通常期に1パック300~400円程度で取引されるイチゴが、クリスマス前には800~1,000円で売れる事例もあります。さらに高級品種や贈答用など特定のニーズに応えられれば、より高い収益が期待できるでしょう。冬場の贈答用としても人気が高いため、固定客や直接取引先を確保しやすい作物でもあります。

● 長期収穫による経営の安定性

促成栽培では約半年間にわたって断続的にイチゴを収穫できるため、露地栽培のように収穫時期が短期間に集中せず、資金繰りを安定させやすい特徴があります。一時的に病害虫や天候不順で収量が落ちても、長いシーズンのなかで回復を図れる「リスク分散効果」も大きいです。実際に、灰色かび病が一時的に発生して収量が下がったケースでも、後半に状態が持ち直して最終的な収益は平年並みに戻ったという例があります。

● 高品質果実の生産

ハウス内で理想的な温度や湿度を保つことで、イチゴにとって最適な生育環境を作り出しやすくなります。露地栽培と比べて雨や霜などの影響を受けにくいため、果実が傷みにくく色ツヤの良いイチゴを収穫しやすいのもメリットです。さらに、冬場は気温が低いため生育がゆっくり進み、その分糖度が高くなる傾向があり、「冬イチゴ=甘くて香りが良い」という評価を得やすくなります。品質の高さはリピーターを増やす武器にもなるため、直売所や観光農園でのブランド化にもつながる可能性があります。

● 労働配分の最適化

収穫期間が長い分、作業が1~2日に一度のペースで分散されるため、短期集中の忙しさが多少緩和されるのもメリットです。家族経営の小規模農家であれば、農繁期のピークに一気に労働力を投入する露地栽培よりも、「毎日少しずつ管理しながら、長く稼ぎ続ける」という促成栽培のほうが労働力を確保しやすい場合があります。働き方改革や若い世代の就農を考える上でも、計画的な労働配分が可能になる点は魅力と言えるでしょう。

【デメリット】

● 初期投資と運営コストの高さ

イチゴ促成栽培は設備投資が不可欠です。ビニールハウスの建設費、暖房機や温度制御システムの導入、灌水設備、ICT機器などを揃えると、10aあたり数百万円から数千万円規模の投資が発生するケースもあります。さらに、冬期の加温には燃料費が大きくかかり、近年の燃料価格高騰は多くの生産者にとって頭の痛い問題です。ランニングコストを抑えるために、ヒートポンプや木質バイオマスなどを活用する例も増えていますが、導入のハードルは依然として高い状況です。

● 高い技術的ハードル

花芽分化の誘導から冬場の温度・湿度管理まで、促成栽培には高度な知識と経験が求められます。特に山上げや冷蔵処理のタイミングを間違えると、開花時期や収量に大きく影響してしまうため、ベテラン農家でも試行錯誤を繰り返すことがあります。新規参入者にとっては高いハードルとなりがちで、地域の先輩農家や普及センターからの指導を受けるなど、技術習得のためのサポート体制を活用するのが成功の近道となるでしょう。

● 病害虫リスクの増大

長期間、かつ高密度でハウス内栽培を行うと、病害虫にとっても繁殖しやすい環境が整いがちです。特に灰色かび病やうどんこ病、ハダニやアブラムシなどは、温度・湿度が高く管理された空間を好み、一度発生すると急速に拡大することがあります。曇天や雨天が続いてハウスの換気が難しいときは、特に要注意です。朝夕の巡回や早期発見、薬剤散布のタイミング、天敵利用など、総合的な防除対策を常に実行できる体制づくりが欠かせません。

● 労働集約的な栽培体系

促成栽培は収穫期間が長期化するため、その間はほぼ毎日、収穫や選果、病害虫防除などの作業が必要になります。イチゴは機械化が難しく、多くの作業が手作業に頼らざるを得ません。ハウスの規模を拡大すればするほど、作業人数の確保が経営上の課題となりやすいのです。特に高齢化が進む地域では、長期にわたる管理体制を維持するのが難しくなっており、パート雇用や作業受委託、高設栽培システムなど、さまざまな方法で省力化を図る取り組みが広がっています。

4. 今日から始めよう! イチゴ促成栽培の育て方ガイド

イチゴ促成栽培は、年間を通じた一連の計画に基づいて行う点が重要です。

4~6月頃には親株を管理し、健全かつウイルスフリーな苗を確保します。

夏の7~8月には短日処理、山上げ、冷蔵処理などを組み合わせて花芽形成を誘導し、秋にはすでに花芽をもった苗をハウスに定植するのが一般的な流れです。

定植後は灌水や防除を徹底しながら苗をしっかりと活着させましょう。10月頃から徐々に開花が進みますが、シーズンの成功は苗作りにあると言っても過言ではありません。

夜間の温度は10~15℃、日中は25℃前後に保ちながら、状況に応じてマルハナバチを導入して受粉率を高めます。

11月以降は実が成熟し始めるので、2日に1回程度のペースで収穫が必要になります。

追肥や摘葉、病害虫防除も並行して行い、翌5月頃まで連続的にイチゴを生産できます。

5. 長期収穫を実現するコツと豆知識:イチゴ促成栽培のポイント

イチゴ促成栽培で長期収穫を成功させるには、夏の苗づくりとハウス内の環境制御が大きなカギを握ります。

夏の段階で苗が徒長してしまうと秋以降の生育に悪影響が出るため、親株の炭疽病やウイルス病を防ぎながら、必要本数の子苗を無理なく確保する技術が重要です。

また、花芽形成のタイミングを誤ると想定していた時期に花が咲かず、冬場の高単価期を逃しかねません。

花芽の形成の促進には体内の硝酸態窒素量も関与しますので、そのコントロールやPK剤の利用も効果的です。バイオスティミュラント資材を利用してみるのもよいでしょう。

ハウス内の環境管理では、夜間の温度が高すぎると花芽分化が進まず、果実の品質も落ちやすくなります。逆に低すぎると生育が停滞し、連続収穫が難しくなります。

さらに湿度が高いと灰色かび病やうどんこ病が発生しやすいため、換気扇や天窓を活用して結露を防ぐことがポイントです。

高設ベンチ栽培を導入すれば土壌病害を減らせるうえ、立ったままの姿勢で収穫できるため、労働負担の軽減や品質保持に役立ちます。

初期コストは高いものの、長期的に見れば作業の省力化や収量アップにつながる可能性があります。

6. 病害虫に負けない! イチゴ促成栽培の注意点

促成栽培では、ハウス内という閉鎖環境でイチゴを長期間育てるため、病害虫が繁殖するリスクが露地栽培よりも高まります。

炭疽病は苗が急激にしおれて枯死する深刻な病気で、ランナーや灌水を介して拡散するケースが多いです。

親株段階での防除が特に肝心で、感染が疑われる株は即座に取り除くなど徹底した対策が必要となります。

灰色かび病は花や果実が灰色のカビに覆われる病気で、低温多湿条件を好むため冬場の換気が不十分な時期に爆発的に増えることがあります。

うどんこ病は葉や果実に白い粉状の胞子が付着し、生育を著しく阻害します。

これらの病気は湿度が高いと特に発生しやすいので、日々の観察と換気管理が重要です。

また耐性のあるしっかりした株(葉)作りも心がけましょう。

害虫ではハダニやアブラムシが代表的で、ハダニは乾燥気味の環境で猛威を振るい、アブラムシはウイルス病を媒介します。

薬剤だけに頼ると耐性がつきやすいため、天敵ダニの活用や黄色粘着板の設置など、生物的・物理的防除を組み合わせた総合的な管理が効果的です。

さらに、ヨトウムシやナメクジなどが夜間に活発に活動してイチゴをかじる被害もあるため、マルチや誘引剤、捕殺などで対処します。

病害虫対策は、ひとつの対策を怠るだけで被害が広がりやすいので、常に圃場の巡回を怠らないことが肝要です。

7. まとめ:イチゴ促成栽培で広がる可能性

イチゴの促成栽培は、冬場の高い需要に合わせて収穫できるという大きなメリットがあり、高収益が期待できる魅力的な栽培方法です。

約半年間の長期収穫による経営の安定、高品質果実の生産、労働配分の最適化など、多くの恩恵をもたらします。

ただし、その一方でハウス設備や暖房機器への投資、燃料費や環境制御コスト、病害虫リスクの増加、技術的ハードルの高さといった課題も抱えています。

こうしたメリットとデメリットをしっかり理解したうえで、地域の先輩農家や普及センターの指導を受けながらノウハウを蓄積し、適切な規模と投資計画で取り組むことが、イチゴ促成栽培の成功につながるでしょう。

最近ではICTや自動制御技術を導入し、省力化と高品質化を同時に追求する事例も増えています。

観光農園や直売所との連携で付加価値を高めるビジネスモデルも人気です。

日本人にとって冬のイチゴは欠かせない存在となっており、その需要は今後も安定して続くと予想されます。

イチゴ促成栽培に取り組むことで、高付加価値かつ長期間にわたって収益を生み出す魅力的な作物を手掛けることが可能になります。

これから始めたいという方は、今回取り上げたポイントを参考にしながら、ぜひ自分なりの栽培プランを練り上げてみてください。

また実際の栽培では、毎日の株の観察と気象環境などに応じたこまめな対応を心がけましょう。

大きな設備投資や技術習得というチャレンジはありますが、その先にある高いリターンとやりがいは、きっと大きな満足感をもたらしてくれることでしょう。

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この記事を書いた人

【プロフィール】

・出身: 1963年 大分県生まれ
・学歴: 国学院大学 卒業

【職務経歴】

・1987年: 株式会社日本実業出版社 入社
・1998年:西日本産業(株)にて主に九州管内で農業資材の開発、営業を担当。
・2009年: フリーの農業記者として食や農に関するイベント、放送番組等の
企画制作に携わる。
・2021年: ファームテック株式会社 代表取締役 就任

【主な役職・活動】

・2010年: 食農コンソーシアム大分(大分県内の若手農業者団体)代表
・2021年:大分県立久住高原農業高等学校 学校評議委員、マイスターハイスクールCEO

【研究・セミナー実績】

・共同研究:ユズ果皮が持つ抗アレルギー能と隔年結果の改善(2009年:大分大学)

・セミナー講師:

「農で生きる・農で生かす」(2012年:大分大学)
「昨今の農業ブームについて考える」(2014年:大分県農商工連携センター)

【メディア事業】

・ラジオ: OBSラジオ「甲斐蓉子の教えて!農業」(2009年7月~)
・テレビ: OBSテレビ「Hadge Padge TV」(2021年4月~)

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