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【農業者必見】バイオスティミュラントでコスト削減&収量アップを同時実現!メリット・デメリットと使い方、注意点を一挙解説

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こんにちは、大田です。

本日は、近年注目される「バイオスティミュラント資材」について、農業者の皆様が導入を検討する際に役立つ情報をまとめています。

ストレス耐性から土壌改良効果まで、分かりやすく解説していますので、ぜひ日々の営農にお役立てください。

目次

いま注目の「バイオスティミュラント資材」とは? 新時代の農業を支える秘密

バイオスティミュラント(Bio-stimulant)資材とは、肥料や農薬とは異なる新しい農業資材の総称です。

肥料は植物に必要な栄養素を直接供給し、農薬は病害虫を防除するのが主な役割ですが、バイオスティミュラントは「作物本来の生理機能を高める」ことを主眼においています。

たとえば、気温が高すぎる、寒すぎる、水分不足や塩分過多などの環境ストレスがかかったとき、作物はどうしても生育障害を起こしやすくなります。

バイオスティミュラントは、そうした非生物的ストレス(暑さ、乾燥、塩害、低温など)に対して耐性を引き上げたり、根の発達を促して養分や水分をより効率的に吸収させたりするなど、作物が本来もっている“力”を最大限に発揮させるための資材です。

近年の異常気象リスクが増大する中で、安定的に収量や品質を確保したいという要望が高まったことが、バイオスティミュラントの注目度を上げた大きな理由の一つです。

欧州では「化学肥料・農薬の使用削減」を政策目標に掲げており、バイオスティミュラントの導入が加速しています。

日本においても、環境配慮型農業や持続可能な農業への移行を目指す動きと相まって、導入が進みつつあります。

これならわかる! バイオスティミュラントをカンタン解説

イメージしやすく例えるなら、

・肥料:作物の“栄養分”を与えるご飯やサプリメント
・農薬:病害虫・雑草などから作物を守る“お医者さん”や“薬”
・バイオスティミュラント:作物の“体力”を底上げする“トレーナー”

といった役割に近いでしょう。

現場でよく聞かれる「本当に効くの?」という疑問に対しては、即効性というよりも、作物の生育をじわじわと底上げしていく効果であることが多いのがポイントです。

たとえば暑さや乾燥が続く時期に散布しておくと、活性酸素の抑制や浸透圧調節によってダメージを軽減できる場合があります。

また、根を強化して土壌中の養分や水を吸収しやすくすると、干ばつなどの極端な条件下でも生育を維持しやすくなるのです。

一方で、肥料のように「与えた瞬間からあからさまに葉色が変わる」「1週間でバイっと伸びる」といったわかりやすい変化は少ないです。

いかにも“効いた”と実感できるかどうかは、環境条件や作物の状態に左右されやすいため、「長期的に見て安定した収量や品質につながった」という形で評価されることも多いでしょう。

どれが自分に合う? バイオスティミュラントの種類と特徴を一挙公開

バイオスティミュラントには、大きく6つほどの系統があります。

下記の分類を知ると、どんな原料が使われているのか、作物にどのような効果をもたらしやすいのかがイメージしやすくなります。

  1. 腐植質・有機酸系

    ・フミン酸(腐植酸)やフルボ酸など。
    ・土壌物理性の改善、養分の可溶化や保持力アップ、発根促進に有効。
  2. 海藻由来・多糖類

    ・海藻抽出エキスやキトサンなど。
    ・高温・乾燥などストレス耐性や、植物ホルモン様物質による生育促進効果。
  3. アミノ酸・ペプチド系

    ・タンパク質加水分解物、各種アミノ酸配合など。
    ・光合成活性化、着果数アップや微量要素の吸収促進。
  4. 微量ミネラル・ビタミン類

    ・鉄、亜鉛、マンガンなどの微量要素、ビタミンB群など。
    ・酵素反応を円滑化し、品質(糖度や色合い)の向上に寄与。
  5. 微生物系

    ・トリコデルマ菌、枯草菌(バチルス属)、菌根菌、根粒菌など。
    ・土壌病害の抑制や窒素固定、リン酸可溶化などで、根圏環境を整える。
  6. その他の資材

    ・動植物由来の機能性成分や微生物代謝産物、発酵副産物など。
    ・防御反応を誘導するエリシター(キトサン、オリゴ糖類)など、多様なラインナップがある。

もちろん、これらを組み合わせた複合製品も多く市販されています。

例えば「海藻エキス+アミノ酸」のように、複数の効果を狙った製品も存在します。

バイオスティミュラントのここがすごい! 農家が得られるメリット5選

  1. 非生物的ストレス耐性の向上

    ・高温、低温、塩害、乾燥などの負荷を軽減。
    ・異常気象下でも作物の落ち込みを最小限に抑えられる。
  2. 生育促進・品質向上

    ・光合成を活性化することで糖度が上がったり、色づきが良くなる例もある。
    ・安定した収量の確保につながり、経営面でのメリットが期待できる。
  3. 養分利用効率アップ

    ・根圏微生物の活性化や土壌改良作用により、肥料当たりの収量が向上する場合あり。
    ・肥料コストの削減や環境負荷の低減にもつながる可能性。
  4. 土壌改良効果

    ・腐植質や微生物を活用する製品なら、土壌の団粒化や保水・保肥力を高められる。
    ・連作障害の緩和、土壌生態系の改善など長期的なメリットも。
  5. 安全性が高いケースが多い

    ・天然物や微生物由来の成分が主体のため、人や環境への毒性リスクが低い。
    ・有機農法や減農薬栽培と相性が良い資材も多い。

使ってみて初めてわかる? バイオスティミュラントのデメリットと回避策

  1. 即効性に乏しく、効果が見えにくい

    ・肥料や農薬のように「投入 → すぐ変化」というケースは少ない。
    ・「本当に効いているのか?」と現場で判断しづらいことがある。
  2. 条件依存性が高い

    ・作物の種類、栽培環境、タイミングなどで効果が大きく異なる。
    ・ある資材は乾燥ストレスには強いが、寒さにはあまり効果がないなど一長一短がある。
  3. コスト面のハードル

    ・製品によっては従来の肥料・農薬より価格が高い場合がある。
    ・試してみて効果が薄いと感じたときのリスクが懸念され、導入をためらう農家も。
  4. 法整備・標準化の遅れ

    ・日本では「肥料・農薬・土壌改良剤」に明確に分類されないことが多く、扱いが曖昧。
    ・製品品質や成分表示が不十分な場合もあり、選ぶ際に苦労するケースがある。
  5. 他資材との相性問題

    ・微生物系資材は殺菌剤との同時散布で菌が死滅するなど、注意点が多い。
    ・葉面散布系は、混用する他の薬液と沈殿を起こす場合も。

いつ・どう使う? バイオスティミュラントの効果的な使い方ガイド

(1) 施用タイミング

・ストレスがかかる前に予防的に
暑さや乾燥が続きそうな時期、高温障害や干ばつが予想される直前に散布することで、作物の体力を事前に高めておける。

・苗や生育初期、開花前など
根量を増やしたい、着果を促進したいなど目的に合わせて、作物の大事なステージを狙って施用する。

(2) 施用方法

・土壌施用
腐植酸や微生物系資材は、土壌に混和したり灌水で根圏へ届ける。

・葉面散布
アミノ酸や海藻由来成分は、葉からの吸収を狙って噴霧するのが一般的。

・種子処理
根粒菌や一部の有用微生物は、種にコーティングして播種する方法もある。

(3) 他資材との組み合わせ

・減肥・減農薬を一気にやりすぎない
バイオスティミュラントを入れたからといって、化学肥料や農薬を全部切るとリスクが大きい。

・トライアルとモニタリング
少面積で試験的に導入し、作物の生育や収量・品質を記録すると、現場レベルで“この資材がウチの圃場に合うか”を判断しやすい。

(4) 効果検証

・期間を長めに見て判断
バイオスティミュラントは効果が徐々に現れるので、1回散布してすぐ結果を求めるのは難しい場合が多い。

・定量的な比較
対照区(未施用区)を用意し、収量・品質・生育ステージなどを比較することで、導入判断の精度が上がる。

これだけは押さえておきたい! バイオスティミュラント導入時の注意点

  1. 適切な用量・用法を守る ・「多く入れれば効果倍増」というわけではなく、かえって微生物のバランスを崩したり、濃度障害を起こすリスクがある。

・製品ラベルやメーカー指導の希釈倍率や施用回数を忠実に守るのが基本。

  1. 混用する際の相性をチェック

・微生物系資材と強力な殺菌剤の同時散布は避ける。

・葉面散布の場合、他の溶液と混ぜると沈殿・変質しないか小規模テストを行うなど事前確認を。

  1. 保存・管理に注意

・微生物資材は高温や直射日光で菌が死滅する可能性があるため、冷暗所で保管。

・液体資材は使用直前に攪拌し、当日中に使い切ると効果が安定しやすい。

  1. 法的表示の確認

・日本では「肥料取締法」の枠内で販売されている製品も多いが、必ずしも農薬としての効能をうたうわけではない。

・「病害虫を抑える」といった表現は農薬取締法上問題になるケースもあるので、商品表示やメーカーの説明を確認する。

  1. 現場レベルでの検証が大切

・最適なバイオスティミュラント資材は、作物や土壌環境、気候条件によって異なる。

・まずは小規模トライアルを行い、手応えを見極めた上で全面展開を検討することが失敗を防ぐコツ。

まとめ

バイオスティミュラント資材は、環境負荷を減らしつつ作物の底力を引き出す「新しい農業資材」として、国内外で急速に普及が進んでいます。

高温や乾燥など異常気象が増える時代に、いかに作物を守り、安定して収穫するか。

あるいは、化学肥料や農薬に頼りすぎない持続的な農業を実現できるか。

そんな課題を解決する有力な選択肢として、バイオスティミュラントには大きな期待が寄せられています。

とはいえ、実際の効き方は資材の種類、施用のタイミング、作物の生育状況、土壌や気候など多くの要因によって左右されます。

即効性よりも、じっくりと生育環境を整え、作物の生理機能を高める“下支え”として考えるのが現実的です。

また、法整備や標準化がまだ十分でないため、製品ごとの差も大きく、「どれを選んだらいいのか迷う」という声もしばしば聞かれます。

結局のところ、最終的にはご自身の圃場で少しずつ試験をし、収量・品質・コスト対効果を見極めていくことが成功への近道です。

もし導入を検討される場合には、メーカーや販売店、農業試験場などの専門家と相談しながら、自作物に合った製品や使用法を選びましょう。

そして、実際に使ったら必ず記録や比較を行い、「いつ・どこで・どんな資材を・どれくらい散布した結果、どうなったか」を蓄積してください。

そのデータが、今後の栽培をより安定させるための大きな武器になります。

バイオスティミュラント資材は、あくまで「作物の体力を底上げする補助役」です。

無理なく農薬や肥料を減らしたい、生育トラブルに強い作物を作りたい、土壌改良も合わせて進めたい──そういったニーズをお持ちの農業従事者の皆様にとって、きっと魅力的なツールとなるはずです。

ぜひ本記事を参考に、自分の圃場に最適なバイオスティミュラントの活用方法を探ってみてください。

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この記事を書いた人

【プロフィール】

・出身: 1963年 大分県生まれ
・学歴: 国学院大学 卒業

【職務経歴】

・1987年: 株式会社日本実業出版社 入社
・1998年:西日本産業(株)にて主に九州管内で農業資材の開発、営業を担当。
・2009年: フリーの農業記者として食や農に関するイベント、放送番組等の
企画制作に携わる。
・2021年: ファームテック株式会社 代表取締役 就任

【主な役職・活動】

・2010年: 食農コンソーシアム大分(大分県内の若手農業者団体)代表
・2021年:大分県立久住高原農業高等学校 学校評議委員、マイスターハイスクールCEO

【研究・セミナー実績】

・共同研究:ユズ果皮が持つ抗アレルギー能と隔年結果の改善(2009年:大分大学)

・セミナー講師:

「農で生きる・農で生かす」(2012年:大分大学)
「昨今の農業ブームについて考える」(2014年:大分県農商工連携センター)

【メディア事業】

・ラジオ: OBSラジオ「甲斐蓉子の教えて!農業」(2009年7月~)
・テレビ: OBSテレビ「Hadge Padge TV」(2021年4月~)

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