こんにちは、ファームテックの大田です。
台風の時期になると、露地野菜や施設野菜では、強風による倒伏、冠水、排水不良、塩害、病害の発生など、いくつもの心配が重なります。
とくに野菜は、水稲や果樹と比べても茎葉がやわらかく、果実や葉が直接傷みやすい作物です。台風が過ぎたあとに圃場へ入ってみると、葉が破れている、株が傾いている、通路に水が残っている、泥が葉や果実に付いている、といった状況が一度に見えることもあります。
そのような場面では、早く何か手を打たなければと感じるものです。ただ、台風後の管理は、急いだ方がよいことと、少し様子を見てから判断した方がよいことがあります。
この記事では、野菜の台風対策について、台風前、台風直後、回復期の流れに沿って、強風、冠水・過湿、塩害、病害リスクへの見方を整理します。
野菜の台風被害は一つではない
台風による野菜への影響というと、まず強風で株が倒れる、葉が破れるといった被害を思い浮かべる方が多いと思います。
もちろん強風被害は大きな問題ですが、実際にはそれだけではありません。大雨による冠水や過湿、排水不良による根傷み、沿岸部では潮風による塩害、傷口からの病害発生など、複数の要因が重なります。
たとえば、強風で葉や茎に傷が入ると、その傷口は病原菌が入りやすい場所になります。大雨で圃場内の湿度が高くなり、葉が乾きにくい状態が続くと、病害の発生条件がそろいやすくなります。さらに根が過湿で弱ると、地上部の回復も遅れやすくなります。
つまり、台風後の野菜管理では、見えている葉や茎の傷みだけで判断せず、根の状態、圃場の水はけ、今後の天候、病害の出やすさまで含めて見ていくことが大切です。
台風前に見ておきたい管理
台風対策は、台風が来てからではできることが限られます。事前に少しでも圃場を整えておくことで、被害を軽くできる場合があります。
まず見ておきたいのは排水です。
大雨が予想される場合は、圃場の周囲や畝間に水がたまりにくいよう、明きょや排水溝の詰まりを確認します。落ち葉、泥、資材などで排水の流れが悪くなっていると、雨量が増えたときに水が抜けにくくなります。
畝立てをしている圃場でも、畝間に水が長く残ると、根の周辺が酸素不足になりやすくなります。根の働きが落ちると、水分や養分の吸収も不安定になります。台風前の排水確認は、地味ですがあとから効いてくる管理です。
次に、支柱、誘引、ネット、トンネル、ハウス周辺の固定を見直します。
ナス、ピーマン、トマト、キュウリなどの果菜類では、株が大きくなるほど風を受けやすくなります。誘引ひもが緩んでいる、支柱が傾いている、ネットの固定が弱いと、強風時に株全体が揺さぶられやすくなります。完全に被害を避けることは難しくても、揺れを減らすことで枝折れや根元の傷みを軽くできる可能性があります。
収穫できる果実がある場合は、台風前に早めに収穫しておく判断もあります。果実が多い状態では、株への負担が大きくなり、風で枝が折れやすくなることがあります。とくに大きくなった果実は、台風後に傷や擦れが出ることもあるため、収穫適期に近いものは先に取っておくと安心です。
また、台風の接近がはっきりしているタイミングでは、無理に播種や定植を進めない判断も必要です。定植直後の苗は根がまだ十分に張っておらず、風雨や過湿の影響を受けやすい状態です。作業計画との兼ね合いはありますが、台風通過後の天候や圃場状態を見てから進めた方が安定する場合があります。
台風直後は、まず安全確認から
台風が過ぎたあとは、できるだけ早く圃場を確認したい気持ちになります。
ただし、強風が残っている時間帯や、水路、河川、排水路の水位が高い状態での見回りは危険です。農林水産省の技術指導資料でも、暴風雨の最中や増水している場所での見回りは避けるよう注意されています。
圃場確認は、風雨が落ち着き、周囲の安全が確認できてから行います。
見回るときは、最初から細かい作業に入るよりも、まず圃場全体を見て状況を分けると判断しやすくなります。
確認したいのは、次のような点です。
・圃場内に水が残っている場所はどこか。
・株が倒れている、傾いている場所はどこか。
・葉や茎、果実に傷が多い作物はどれか。
・泥はねや塩分の付着が見られるか。
・ハウス、支柱、ネット、マルチなどに破損がないか。
・作業機や資材の通路が確保できるか。
台風後は、圃場全体が傷んで見えるため、何から手を付けるか迷いやすくなります。まずは水が残っている場所、株が倒れている場所、病害が出やすそうな場所を分けて見ると、優先順位をつけやすくなります。
冠水・過湿がある場合は排水を優先する
台風後にもっとも急ぎたい管理の一つが、圃場内の停滞水をできるだけ早く抜くことです。
野菜の根は、水分だけでなく酸素も必要としています。畝間や根の周りに水が長く残ると、根が酸素不足になり、吸水や養分吸収が落ちやすくなります。根が弱ると、葉がしおれる、回復が遅れる、果実肥大が鈍る、落花や落果が出るといった形で影響が見えてくることがあります。
冠水や過湿があった圃場では、まず排水溝や畝間の水の流れを確認します。流れが止まっている場所があれば、泥や残さを取り除き、水が抜ける道を作ります。
このとき、すぐに肥料を効かせようとしたり、強い管理で株を動かそうとしたりする前に、根が呼吸できる状態を戻すことが先になります。根が傷んでいる状態では、施肥をしても吸収が安定しにくく、かえって株に負担がかかる場合もあります。このような時、発根を促すバイオスティミュラント資材の散布も有効です。
泥が葉や果実に付いている場合は、作物や圃場条件を見ながら、洗い流せる範囲で対応します。ただし、葉や茎がすでに傷んでいる状態で強くこすると、さらに傷を広げることがあります。汚れを落とすことと、株を傷めないことの両方を見ながら作業します。
強風で傷んだ株は、残す部分と取る部分を分けて見る
強風を受けた野菜では、葉の破れ、茎の折れ、枝の裂け、果実の擦れ傷などが出やすくなります。
傷んだ葉や折れた枝を見ると、すぐにきれいに整理したくなります。ただ、台風直後に葉を取りすぎると、光合成できる葉が少なくなり、株の回復に必要な力が不足することがあります。
まずは、完全に折れている枝、腐敗しそうな部分、病害の発生源になりそうな部分を中心に取り除きます。一方で、多少破れていても緑色が残り、光合成に使えそうな葉は、すぐに全部取らずに残す判断もあります。
ナス、ピーマン、トマト、キュウリなどの果菜類では、台風後に株が弱っているとき、着果負担が大きいままだと回復が遅れることがあります。果実が多く付いている場合は、若採りや摘果で負担を軽くする選択もあります。
この判断は、作物の種類、株の勢い、今後の収穫計画によって変わります。すべてを一律に落とすのではなく、株の状態を見ながら負担を調整していくことが大切です。
塩害が疑われる場合は、早めの洗浄を検討する
沿岸部や海に近い地域では、台風によって潮風が吹き込み、葉や果実に塩分が付着することがあります。
塩分が葉に付いたままになると、葉焼けや生育不良につながることがあります。台風後に葉先が焼けたように変色する、葉の表面に白っぽい付着物が見える、海風を強く受けた方向の株だけ傷みが強い、といった場合は、塩害の可能性も見ておきたいところです。葉のワックス層を強化するバイオスティミュラント資材の散布も効果的です。
農林水産省の技術指導資料でも、潮風を受けた場合には、散水によって塩分を洗い流す対応が示されています。
ただし、すでに圃場が過湿になっている場合や、排水が悪い場合は、水をかけることで根周りの過湿を長引かせる可能性もあります。塩分の洗浄を行う場合も、排水の状態を確認しながら進めると安心です。
塩害は、直後には分かりにくく、数日後に葉の変色や生育停滞として見えてくることもあります。台風後すぐの状態だけでなく、その後に出てくる新葉の色や伸び方も見ておくと、回復の目安になります。
台風後は病害リスクが高まりやすい
台風後の野菜では、病害の発生にも注意が必要です。
強風でできた傷、泥はね、長時間の葉濡れ、高湿度、排水不良は、病害が出やすい条件につながります。とくに、葉や茎に傷が多い作物、風通しが悪くなっている場所、泥が付着したままの株は、その後の変化を見ておきたいところです。
病害対策では、地域の病害虫発生予察情報や、普及指導機関、JAなどの情報を確認することが大切です。農薬を使う場合は、必ず対象作物、対象病害、使用時期、使用回数、希釈倍率などの登録内容と使用基準に従ってください。
台風後は、作業が重なり、焦って判断しやすい時期でもあります。防除を行う場合も、まずは発生しやすい病害、圃場で実際に出ている症状、今後の天候を見ながら、必要な対策を選んでいくことが大切です。
また、通路や畝間に残さが多いと、湿気がこもりやすくなることがあります。株元の風通し、枯れ葉や折れ枝の整理、排水の確保など、薬剤以外の基本管理も病害リスクを下げるうえで役立ちます。
回復期は、株の状態を見ながら無理なく立て直す
台風後の回復期に見たいのは、株が次の生育へ向かう力を取り戻しているかどうかです。
目安になるのは、新葉の色、葉の展開、茎の伸び、根元の状態、花や果実の付き方です。古い葉が傷んでいても、新しい葉がしっかり展開してくるようであれば、回復に向かっている可能性があります。
一方で、新葉が小さい、色が薄い、しおれが戻らない、花落ちが続く、果実の肥大が止まるといった場合は、根傷みや株の消耗が残っているかもしれません。
この時期は、すぐに収量を戻そうと株に負荷をかけるよりも、まず根と葉の働きを戻すことを意識します。過度な追肥や急な管理変更は、弱っている株には負担になる場合があります。圃場の水分、根の状態、天候を見ながら、少しずつ立て直していく方が安定しやすくなります。
そのような時にバイオスティミュラント(植物活性剤)の使用も効果があるといわれています。
万能な回復策としてではなく、株の状態を見ながら立て直していくのが現実的です。葉が大きく傷んでいる場合、葉面からの吸収が期待しにくいこともあります。根が過湿で弱っている場合は、まず排水や根域環境を整えることが先になります。
資材の検討は、圃場の状態を整理したあとでも十分です。作物が今どの段階にあり、何が一番の制限になっているのかを見ることで、必要な対策を選びやすくなります。
作物ごとに見たいポイント
野菜といっても、台風後に注意したい点は作物によって少しずつ違います。
トマト、ナス、ピーマン、キュウリなどの果菜類では、枝折れ、誘引の緩み、果実の擦れ傷、着果負担を見ます。株が大きく、果実も多い時期ほど、風の影響を受けやすくなります。台風後は、傷んだ枝の整理とあわせて、果実をどれだけ残すかも判断材料になります。
キャベツ、ハクサイ、レタスなどの葉菜類では、葉の破れ、泥はね、葉の中に水が残る状態に注意します。傷んだ葉や泥の付着は、病害の入り口になることがあります。収穫時期が近いものでは、品質面の確認も必要です。
ネギ類では、倒伏、葉折れ、軟腐症状、排水不良を見ます。株元に水が残ると傷みやすくなるため、排水の確認が大切です。
根菜類では、地上部だけでなく、畝の崩れ、土壌の過湿、根部の傷みを見ます。見た目の葉が回復していても、土の中で過湿の影響が出ている場合があります。
いずれの作物でも、台風後の管理は「何をしたか」だけでなく、「どの順番で見たか」が大切になります。安全確認、排水、傷んだ部分の整理、病害リスクの確認、回復管理という流れで順を追って見ていくと、対応の抜けを減らしやすくなります。
まとめ
野菜の台風対策では、台風前の準備と、台風後の見極めの両方が大切です。
台風前には、排水、支柱やネットの固定、収穫できる果実の早めの収穫、定植や播種時期の見直しなどを確認します。台風直後は、安全を確保したうえで圃場全体を見て、冠水、強風被害、塩害、病害リスクを分けて整理します。
とくに台風後は、見えている傷みに目が向きやすいですが、根の過湿、葉や茎の傷、湿度の高さ、塩分の付着などが重なっていることがあります。排水を優先し、株の負担を見ながら、必要な部分を少しずつ整えていくことが回復につながります。
台風被害は、地域、作物、圃場条件によって大きく変わります。今回の記事が、台風前後の圃場確認や管理を考える際の参考になれば幸いです。
