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活着とは?秋冬野菜の定植後に苗が動かない原因と高温期の管理ポイント

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こんにちは、ファームテックの大田です。

地域や作型によって幅はありますが、夏の終わりから9月にかけて、キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、レタスの定植が続きます。作型の都合で、この時期を大きくずらすことは簡単ではありません。

一方で、気象庁が2026年8月25日に発表した3か月予報では、9月から11月にかけて気温が平年より高くなる確率が、北日本・東日本で60パーセント、西日本で50パーセントとされています。定植の適期と、夏の暑さの名残が重なる状態が今年も続きそうです。

この時期になると、次のような相談が増えます。

「植えてから一週間経つのに、苗が動かない」

「水はやっているのに、萎れが戻らない」

「同じ日に植えたのに、欠株が出た場所と出ない場所がある」

活着は定植してからの数日でおおよそ決まります。新潟県上越農業普及指導センターがまとめたブロッコリーの栽培マニュアルにも、活着が悪く初期生育が不良になると極端に収量が低下する、と書かれています。定植直後の数日が、その年の収量を左右する時間だといえます。

そして、活着が悪いときに最初にやりたくなるのが「もっと水をやる」という対応です。ただ、水を足せば解決する圃場もあれば、水ではないところに原因がある圃場もあります。

この記事では、活着のときに苗の中で何が起きているのか、圃場で確認したいポイント、基本管理の見直し方を整理します。

目次

活着とは何か?定植後の数日で起きていること

活着とは、移植した苗が新しい土に根を張り、自分の力で水と養分を吸って生育を再開することを指します。

ここで大切になるのが細い根(毛細根)です。水や養分を実際に吸っているのは、太い根ではなく、その先に無数に出る細根です。

定植した瞬間、苗には根鉢の外に伸びた根がありません。つまり、根鉢の中に含まれている限られた水だけが当面の水源です。その一方で、葉からの蒸散は止まりません。

活着とは、この収支を乗り切る期間だと考えると分かりやすくなります。新しい根が根鉢の外に伸びて周囲の土から水を吸えるようになるまで、苗は吸収が足りない状態で耐えています。この期間が長引くほど、株の消耗は大きくなります。

高温は、この収支を三つの経路で崩します。

一つ目は、蒸散量が増えることです。 気温が高く日射が強いほど葉から出ていく水は増え、根鉢の中の水では追いつかなくなります。

二つ目は、地温が上がりすぎて新根が伸びにくくなることです。 根が伸びるには適した温度帯があり、地温が高すぎる状態が続くと根の活動そのものが鈍くなります。土の中の温度は目に見えないため、見落とされやすい部分です。

三つ目は、苗そのものが弱っている場合です。 育苗期に高温にさらされた苗は、徒長したり、定植適期を過ぎて老化していたりします。定植の時点ですでに消耗していれば、活着の期間を乗り切る体力が落ちます。

「水をやっているのに萎れが戻らない」という状況は、水の量以外のところに原因があることを示している場合があります。高温そのものが作物に与える影響については、夏でもおいしい野菜を作る農業の高温対策でも作物別に整理しています。

高温期の活着不良は、秋冬野菜に共通する課題

活着不良は、個々の圃場の問題というより、秋冬野菜に共通して起きている課題です。

農林水産省は「令和7年度地球温暖化影響調査レポート」で取りまとめられた事例をもとに、都道府県から報告された夏季の高温被害と、産地で効果が確認された対策を品目ごとに公表しています。この資料では、秋冬野菜の主要品目のほとんどで活着不良が挙がっています。

品目生育ステージ/気象条件発生が懸念される障害被害産地で効果が確認された対策
キャベツ播種期〜育苗期/高温・少雨発芽率の低下、苗質の低下、生育不良、枯死、活着不良、根朽ち症状・立枯れ症状の多発、小球化・分球の発生適正なかん水、遮光・遮熱資材の活用、スーパーセル苗の活用、作付け時期の最適化、適正品種の作付
ハクサイ播種後〜定植直後/高温発芽率の低下、活着不良、枯死発芽促進、環境ムラの軽減、活着までのかん水、高温ストレスの影響軽減
ブロッコリー定植直後〜生育期/高温・少雨活着不良、生育遅延、枯死適正なかん水、高温ストレスの影響軽減
レタス定植期〜生育初期/高温・少雨活着不良、生育不良、生育遅延、枯死、結球不良、チップバーン適正なかん水

品目をまたいで見ると、対策の中心が「かん水」と「苗づくり」だと分かります。特別な資材や新しい技術ではなく、水をどう届けるか、どんな苗を植えるかという最も基本の部分です。

もう一つ共通しているのが留意点の欄です。かん水については「水源の確保が必要」「労力負担が大きい」、遮光資材やセル苗については「育苗スペース確保、資材の初期投資が必要」と書かれています。

つまり、何をすればよいかは分かっていても、やりきることが難しいという状態が全国の産地で共有されています。裏を返せば、限られた水と労力をどこに優先して使うかを判断できることが、この時期の管理では効いてきます。

定植後に苗が動かないとき、圃場で確認したいこと

水を足す前に確認しておきたい点を整理します。

萎れの出方を、時間帯と分布で分ける

日中だけ萎れて朝には戻っている場合は、蒸散に吸水が一時的に追いついていない状態です。新根が出れば解消していくことが多く、過度な対応は必要ないこともあります。

朝の時点でも萎れたままの場合は、吸水そのものができていない可能性があります。根鉢の乾き、根の傷み、地温、病害を疑います。

一部の株だけに出ている場合は、株そのものより、かん水のむら、土質のむら、苗のばらつきを先に確認します。

根鉢を、実際に抜いて見る

数株で構いません。根鉢が乾いていないか、根鉢の外に白い新根が出ているか、根が変色していないかを見ます。

見落とされやすいのが、根鉢だけが乾いていて周囲の土は湿っているという状態です。定植前に苗を乾かしてしまった場合や、根鉢と土の密着が悪い場合に起こります。この状態では畝全体にかん水しても肝心の根鉢まで水が届きません。

植え付けの深さと、土の密着を見る

新潟県のブロッコリー栽培マニュアルには、根鉢が畝の表面に露出すると活着せずに枯死するため、浅植えになっているところは手直しすること、定植後に株元がぐらつく場合や本畑の土と根鉢が密着しない場合は株元に覆土をすることが示されています。

植えたあとに畝を一往復して、浅植えとぐらつきだけ直しておく。それだけでも欠株の出方は変わります。

欠株の分布から原因を絞る

・圃場全体に散らばっている場合は、苗質や気象条件の影響
・特定の列やかん水設備の末端に集中している場合は、チューブの詰まりや流量の低下
・特定の場所にまとまっている場合は、排水不良、土質の違い、地温の差

かん水設備は、設定どおり動いていても圃場全体へ均等に届いているとは限りません。

病害の可能性を切り分ける

高温期には、立枯れや根朽ちのように活着不良と見た目が似た症状を示す病害もあります。株元や根の変色を見て、活着不良と決めつけないようにします。判断に迷う場合は、外観だけで判断せず、地域の普及指導機関やJAへ相談してください。

基本管理の見直し方

適した方法は地域、作型、土質、かん水設備によって変わります。以下は代表的な考え方として、自分の圃場の条件に置き換えて読んでいただければと思います。

かん水は、量よりも「いつ、どこへ」

乾いた根鉢のまま植えない。 根鉢が乾いた状態で植えると、周囲の土が湿っていても根鉢まで水が届かず、その後のかん水では回復しにくくなります。植える前に苗の水分状態を見ておきたいところです。

播種する品目についても同じことが言えます。大分県の「少雨・高温対策マニュアル(野菜)」では、8月以降に播種するはくさい、ほうれんそう、にんじん、だいこん等について、発芽を早く揃えるために播種圃場へ前日に十分かん水しておくことが示されています。

定植直後は株元へ集中させる。 大分県のマニュアルではキャベツやレタス等について定植直後の4〜5日間は株元にかん水すること、新潟県のマニュアルでは活着が安定するまで定植後3〜7日間は必ず朝にかん水することが示されています。日数に幅はありますが、定植してからの一週間弱に集中させるという考え方は共通しています。

時間帯を選ぶ。 大分県のマニュアルでは、野菜全般の少雨対策として、かん水は涼しい時間帯の早朝・夕方に実施し、晴天が予想される日は特に早朝に行うこととされています。あわせて、定植直後の場合は株元に水がかかるよう注意することも示されています。日中の高温時のかん水は、水そのものが温まっていたり、地温を急に変化させたりすることがあります。

ただし過湿も根を傷めます。 活着が進まないからと水を入れ続けると、今度は根の周辺が酸素不足になります。水が滞留しないよう、排水の状態もあわせて見ておきたいところです。

地温と日射を抑える

大分県のマニュアルでは、マルチの上から敷きわら等を厚く行うと地温上昇の防止に効果があるとされています。マルチをはがさずに地温を下げられるため、高温期には現実的な方法です。

新潟県のマニュアルでは、育苗期の高温対策として遮光率40〜50パーセント程度の白寒冷紗の使用が示されています。ただし遮光は徒長を招くこともあるため、強く遮光しすぎないこととされています。

定植の時刻も条件を変えます。新潟県のマニュアルでは、高温・乾燥期の定植作業は気温が下がりはじめた頃から行い活着促進を図ること、定植直前に耕うんして圃場の乾燥を防ぐことが示されています。真昼の定植を避けるだけでも、苗が持ち出しで耐える時間を短くできます。

苗質を落とさない

定植が遅れて老化した苗は根の活力が落ちており、植えたあとの新根の発生も鈍くなります。国の資料でも、キャベツについて「作付け時期の最適化」が対策に挙がっています。

新潟県のマニュアルでは、老化苗の定植を避けることに加えて、黄化した苗は活着不良、初期生育不良となり、定植後の生育がはっきり劣ると書かれています。定植前に葉色が淡くなったり下葉が黄化したりしている場合は、その時点で対応を考えておきたいところです。

また、機械定植では小苗の方が作業性はよいものの、圃場の乾燥が続く場合には活着と初期生育が悪く収量性が劣るとも指摘されています。根鉢の形成が未熟で鉢土がくずれる場合も、植え傷みにつながります。

バイオスティミュラントは、どこに位置づくのか

農林水産省の資料では、ハクサイとブロッコリーの対策欄に「高温ストレスの影響軽減」が挙げられています。そしてその留意点の欄に、ハクサイでは「バイオスティミュラント資材の効果検証の必要」、ブロッコリーでは「バイオスティミュラント資材の効果を検証する必要」と書かれています。

私たちはバイオスティミュラントを扱う会社です。そのうえで言います。この資材は、高温期の活着対策としては今、全国の産地で試され始めた段階にあります。使えば必ず活着不良が解決するというものではありません。

バイオスティミュラントは、植物や土壌が本来持つ機能を補助し、養分の利用効率や非生物的ストレスへの耐性を改善することを目的とした資材です。目的はそこにあります。肥料のように養分を与えるものでも、農薬のように病害虫を防ぐものでもありません。基本的な考え方は気候変動に左右されずに植物本来の成長力をサポートするための資材です。

バイオスティミュラントの市場は拡大しています。うまく取り入れながら効果を発揮できている生産者も増えています。そのうえで、三つはっきりさせておきます。

効果は条件で変わります。 製品、作物、作型、使用時期、栽培環境で結果は変わります。アミノ酸、海藻抽出物、腐植物質は、いずれもバイオスティミュラントと呼ばれますが、同じ働きをするわけではありません。種類ごとの違いは肥料代1.5倍時代の減農薬・減化学肥料でも触れています。

基本管理の代わりにはなりません。 かん水が足りていない、根の周りが過湿になっている、地温が上がりすぎている、老化苗を植えている。この四つを資材だけで帳消しにすることはできません。

枯れ込んだ株は戻りません。 活着に失敗した株が資材で回復することはありません。見るべきは、そのあとに出てくる新葉と根です。

だからこそ、自分の圃場で確かめる価値があります。想定する作物と作型での試験結果、使用時期、希釈倍率、混用の可否を確認したうえで、まず小面積で試してください。使った区と使わなかった区で、活着までの日数と欠株率がどう違ったかを記録する。国が「効果検証の必要」と書いている段階だからこそ、現場で取ったデータに意味があります。

まとめ。定植後に見ていく順番

  1. 萎れの出方を確認する(時間帯、回復の有無、株の分布)
  2. 数株を抜いて、根鉢の乾き、新根の有無、根の変色を見る
  3. 植え付けの深さと、根鉢と土の密着を確認する
  4. かん水の量と時間帯、設備のむらを見直す
  5. 地温と日射を確認し、敷きわらや遮光の必要性を判断する
  6. 苗質と作付け時期を振り返る
  7. 病害の疑いがある場合は、外観だけで判断せず相談する

大切なのは「水が足りない」と決めつけないことです。水を増やすべき圃場もあれば、地温を下げることが先の圃場も、苗と作付け時期の見直しが先の圃場もあります。同じ症状に見えても、原因の置き場所は圃場ごとに違います。

高温期の定植は、対策が分からないのではなく、限られた水と労力の中でどこまでやりきれるかという問題でもあります。すべてを完璧にやることは難しくても、活着までの数日をどう乗り切るかという視点で優先順位をつけていただければと思います。

自分の圃場での原因の切り分けや、栽培環境に合う資材の選び方で迷う場合は、弊社ファームテックまでお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

【プロフィール】

・出身: 1963年 大分県生まれ
・学歴: 国学院大学 卒業

【職務経歴】

・1987年: 株式会社日本実業出版社 入社
・1998年:西日本産業(株)にて主に九州管内で農業資材の開発、営業を担当。
・2009年: フリーの農業記者として食や農に関するイベント、放送番組等の
企画制作に携わる。
・2021年: ファームテック株式会社 代表取締役 就任

【主な役職・活動】

・2010年: 食農コンソーシアム大分(大分県内の若手農業者団体)代表
・2021年:大分県立久住高原農業高等学校 学校評議委員、マイスターハイスクールCEO

【研究・セミナー実績】

・共同研究:ユズ果皮が持つ抗アレルギー能と隔年結果の改善(2009年:大分大学)

・セミナー講師:

「農で生きる・農で生かす」(2012年:大分大学)
「昨今の農業ブームについて考える」(2014年:大分県農商工連携センター)

【メディア事業】

・ラジオ: OBSラジオ「甲斐蓉子の教えて!農業」(2009年7月~)
・テレビ: OBSテレビ「Hadge Padge TV」(2021年4月~)

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