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みかん(柑橘類)の肥料の時期|秋肥(お礼肥)はいつまで?収穫後の樹勢回復と、施肥が遅れたときの対処

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こんにちは、ファームテックの大田です。

温州みかん等、柑橘類の収穫が本格的に進む時期になりました。

この時期、次のような状況になっている園地も多いのではないでしょうか。

「収穫に追われて、秋肥がまだ入れられていない」

「マルチを外すまで肥料が入れられず、気づいたら11月も半ばになっていた」

「もう地温も下がってきたし、今から入れても意味があるのか分からない」

秋肥は、収穫で消耗した樹を回復させ、翌年の花や新梢の準備をする大切な肥料です。そのため「適期に入れる」ことがよく強調されます。

ただ、現場では収穫の最盛期と施肥の適期がどうしても重なります。予定どおりに入れられないことがあるのは、珍しいことではありません。

そして、ここで知っておきたいのが、秋肥は遅れたからといって無駄になるわけではない、ということです。愛媛県が公開している試験の結果では、時期が遅れても根はきちんと肥料を吸っていることが確かめられています。

この記事では、秋肥(お礼肥)の役割と時期の目安、遅れやすい理由、遅れたときに打てる手を、公的機関の資料をもとに整理します。

目次

秋肥(お礼肥)とは?二つの役割を持つ肥料

温州みかん等の施肥は、一般に春肥・夏肥・秋肥の年3回に分けて考えます。このうち、収穫の前後に入れるのが秋肥です。「お礼肥(おれいごえ)」と呼ばれることもあります。

愛媛県が公開している技術資料では、温州みかん等の秋肥には二つの役割があると整理されています。

一つ目は、「お礼肥」としての役割です。その年の果実生産で消耗した養分を補給し、樹勢を回復させます。

二つ目は、「基肥(もとごえ)」としての役割です。吸収した養分を樹の中に貯めておき、翌春の新梢や花といった新しい器官をつくる材料にします。

JA全農えひめの技術情報でも、秋肥の役割として、果実生産で消耗した養分の補給、樹勢回復、耐寒性の向上、翌年の花芽分化の促進が挙げられています。

つまり秋肥は、「今年のお礼」であると同時に「来年への仕込み」でもあります。この二つを分けて考えておくと、時期が遅れたときの判断がしやすくなります。

秋肥(お礼肥)の二つの役割

秋肥の時期はいつ?品種と作型で変わる目安

秋肥の適期は、品種と作型によって変わります。収穫時期が違えば、施肥できるタイミングも違うためです。

JA全農えひめの技術情報に、愛媛県農産園芸課の目安として示されている秋肥の時期は、次のとおりです。

品種・作型別の、秋肥の時期の目安

これは愛媛県での目安です。地域や園地の標高、その年の気象によって適期は前後します。実際の時期と量は、お住まいの自治体やJAの栽培暦で確認してください。

早めがよい理由は、地温にある

秋肥を早めに入れたほうがよいとされる理由は、地温です。

JA全農えひめの資料では、地温が12℃を下回ると根の活力が低下して養分の吸収が抑えられるため、早めの施肥が効果的だとされています。あわせて、吸収された養分が年内に枝や葉へ移っておくことが重要だとも書かれています。

同じ愛媛県の資料にある試験でも、施用時期が早いほど、その年の葉へ移る秋肥の窒素は多くなりました。お礼肥としての効果をしっかり出すには、やはり適期に入れることが基本です。

ただし、早すぎても問題がある

一方で、早ければ早いほどよいわけでもありません。

千葉県の温州みかんの生育情報では、施肥時期が早すぎると着色の遅れや浮皮果が生じ、遅くなると低温で吸収が悪くなる、と注意されています。

まだ樹に果実が残っている時期に窒素が効きすぎると、果実の仕上がりに影響が出ることがあります。収穫時期との兼ね合いを見ながら、品種ごとに時期を決めることが大切だといえます。

秋肥が遅れやすいのには、理由がある

秋肥の時期が遅れるのは、怠けているからではありません。構造的に遅れやすい事情があります。

秋肥が遅れやすい、三つの理由

収穫の最盛期と重なる

熊本県農業研究センターの研究成果情報では、極早生温州等について、秋肥の施用時期が収穫作業の最盛期と重なるため、施肥がされなかったり、時期が遅れたりしている、と書かれています。

収穫、選果、出荷が続くなかで、施肥の作業を割り込ませるのは簡単なことではありません。

マルチの被覆期間と重なる

シートマルチ栽培では、さらに事情が重なります。

佐賀県果樹試験場の研究成果情報では、普通温州のシートマルチ栽培で、秋肥の施用時期とマルチの被覆期間が重なるため施肥が遅れ、樹勢回復が不十分な園地が見られる、と指摘されています。

愛媛県の資料でも、マルチ栽培の普及によって秋肥の施用が遅れるケースが多く見られる、とされています。

秋の雨が少なく、入れても溶けない

三つ目は、近年の秋の天候です。

佐賀県果樹試験場の資料では、近年の秋は降水量が少ない傾向にあり、2022年と2023年の10月上旬から11月下旬までの総降水量は、佐賀市で65.5ミリと70.5ミリでした。1990年から2020年の平均は179.2ミリで、1990年以降で最も少ない年と3番目に少ない年にあたります。

同じ資料では、秋肥の時期に雨が少ないと肥料の溶け出しが遅れやすく、長い乾燥で根の活力も落ちているため、吸収が遅れる傾向にあると書かれています。

秋肥の時期の降水量(佐賀市)

つまり、予定どおりに肥料を撒いていても、雨がなければ、樹が吸える状態になるまでに時間がかかります。

秋肥が遅れたとき、やめずに考えたいこと

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

12月でも、根は肥料を吸っている

愛媛県の資料では、重窒素(15N)という目印をつけた窒素を使い、秋肥を11月上旬、11月下旬、12月中旬に施用した樹で、肥料の窒素がどこへ行くかを追いかけた試験が紹介されています。

結果は次のとおりでした。

  • その年の葉へ移る秋肥の窒素は、施用時期が早いほど多かった
  • 一方で、細根に吸収されて貯まる量は、12月中旬に施用しても11月上旬と同程度だった
  • 根に貯まった秋肥の窒素は、4月の萌芽期以降に急に減り、翌春の花と新葉へは、施用時期に関係なく同程度に移っていた
秋肥の施用時期と、窒素の行き先

資料では、施肥が12月に遅れた場合、お礼肥としての効果は少なくなるものの、基肥としての効果は十分にある、とまとめられています。

なお、この試験で確かめられているのは12月中旬の施用までです。それより遅い場合の効果は、この資料からは分かりません。

さらに、次の年が表年(なり年)にあたり、花による養分の消耗が多いと判断される場合は、基肥の効果を期待して、多少時期が遅くなっても施用することが大切だとしています。

「もう遅いから今年は省こう」と判断する前に、ぜひこの結果は知っておきたいところです。遅れた秋肥は、今年の樹勢回復には効きにくくなっても、来年の花と新葉の材料としては必ず働きます。

遅れたら、肥料の種類を変える

時期が遅れた場合は、肥料の種類も見直します。

愛媛県の資料では、遅れて施用する際は速効性の無機質肥料(化成肥料や単肥)を使い、施用後しばらく雨がないときはかん水を行うよう示されています。JA全農えひめの資料でも、適期を逃した場合は速効性の化成肥料や液肥などで施用するよう書かれています。

熊本県の試験でも、極早生温州「肥のあかり」の収穫後(10月中旬)の秋肥として、有機配合肥料より速効性肥料やバイオスティミュラントを施用したほうが12月時点の葉中窒素含有率が高くなりました。

同じ10月中旬の施用でも、速効性資材のほうが年内に葉の窒素を高めていたことになります。時期が遅れて時間がないときほど、すぐに効く即効型の資材を選ぶという考え方です。

葉面散布で、窒素を補う

もう一つの手段が、葉面散布です。

熊本県の同じ試験では、秋肥が12月中旬に遅れた場合、葉中窒素含有率は10月中旬に施用した場合より低くなりました。ただし、12月に尿素の葉面散布を併せて行うことで、葉中窒素含有率は上昇し、窒素は樹に吸収されていました。この試験では、尿素300倍液を10アールあたり約800リットル、5日おきに3回散布しています。

なお、この試験では秋肥の遅れが着花に与える影響までは明らかにできておらず、資料自体は、樹勢回復のために施用時期が遅れないよう実施することを求めています。葉面散布は、遅れてしまったときの補い方として受け止めておきたいところです。

千葉県の温州ミカン生育情報でも、乾燥の影響で樹勢が落ちた樹は、収穫後ただちに窒素主体の液肥やバイオスティミュラントなどの葉面散布して樹勢の回復を図るよう指導されています。

葉面散布は、根の吸収が鈍る時期でも葉から直接養分を届けられるのが利点です。

ただし、葉面散布は土からの施肥の完全な代替にはなりません。一般に、葉から入れられる量には限りがあるため、あくまで遅れや不足を補う手段です。秋肥そのものは施用したうえで、樹勢の落ちた樹に上乗せするものとして考えておくと、使いどころを間違えにくくなります。

濃度や散布回数は、使う資材のラベルと地域の指導内容を確認してください。一般に、濃すぎると葉焼けの原因になることもあります。

乾いていたら、まず水

雨が少ない年は、肥料より先に水を考えます。

佐賀県果樹試験場の資料では、温州ミカン等について、収穫後はただちに水分ストレスを和らげ、肥料を効率よく吸収させて樹勢を回復させる必要があり、そのために積極的にかん水を行うよう書かれています。同じ資料の試験では、秋肥の施用前後にかん水を行うことで、肥料の溶け出しが早まり、養分の吸収が促されることが示されています。

特に、シートマルチで夏から秋に水を絞ってきた樹は、収穫の時点で水分ストレスが大きくなっています。マルチを外したら、施肥とかん水をセットで考えたいところです。

かん水の設備がない園地も多いと思います。その場合でも、肥料は水に溶けてはじめて吸われるようになるため、施肥のタイミングを雨の予報に合わせることは一つの工夫になります。

秋肥が遅れたときの、三つの手

樹の状態を見て、量と優先順位を決める

秋肥は、すべての樹に同じように入れればよいものではありません。手が回らない年ほど、どの樹から先に手をつけるかを決めておくと作業が楽になります。

優先したいのは、成り疲れした樹と来年が表年の樹

たくさん成らせた樹は、それだけ養分を消耗しています。たとえば葉色が淡い、新梢の伸びが弱いといった様子が見える樹は、樹勢回復のための秋肥を優先したいところです。

また、来年が表年にあたる樹は、春に多くの花をつけるため、基肥としての秋肥がより重要になります。先ほどの愛媛県の資料が、表年の前は多少遅れても施用することが大切だとしているのは、このためです。

佐賀県果樹試験場の資料でも、収穫後に速やかに樹勢を回復させることが、隔年結果の防止や是正につながると書かれています。

量を増やせばよい、というわけではない

遅れを取り戻そうとして、量を増やしたくなることもあるかもしれません。ただ、施肥量と収量の関係を調べた試験を見ると、量を足せば足すほどよいわけではないことが分かります。

熊本県農業研究センターの研究成果情報では、早生温州「肥のあすか」で年間の窒素施用量を県基準より2割減らしても、5年間の累計収量、果実品質、樹体生育は県基準と同等でした。4割減らすと品質は同等でしたが、収量はやや少なく、葉中窒素含有量は低く推移しました。

この試験はシートマルチ栽培の条件で行われたもので、すべての園地にあてはまるわけではありません。それでも、窒素を2割減らしても収量や品質が変わらなかったという結果は、施肥量と収量が単純に比例するわけではないことを示しています。量は県の基準と土壌診断を土台に決め、遅れた分は量ではなく肥料の種類とかん水で補う、と考えるほうが現実的です。

冬に葉を落とさない

秋肥とあわせて見ておきたいのが、冬の落葉です。

佐賀県果樹試験場の資料では、旧葉は次の年の生産のための養分を蓄えており、冬の寒風や過度な乾燥で葉が落ちると、樹体栄養の低下や着花の減少など、隔年結果の要因になると書かれています。

せっかく秋肥で養分を貯めても、葉を落としてしまえばその分が失われます。極端に雨が少ない場合は、かん水や敷きわら、有機物の施用で土の乾燥を防ぐことが基本とされています。冬は根の動きが鈍く水分の吸収が少ないため、葉水で地上部から水分を補うことも効果的だとされています。

来年に向けて、春肥・夏肥とのつなぎ方

秋肥は、1年の施肥の締めくくりであると同時に、翌年の施肥計画の起点でもあります。

秋肥が毎年のように遅れてしまう園地では、1年の配分そのものを見直す考え方もあります。

佐賀県果樹試験場では、秋肥の時期とマルチの被覆期間が重なる普通温州のシートマルチ栽培で、夏肥の割合を高める「夏肥重点施用」を試しています。年間の施肥配分を、慣行の春:夏:秋=4:2:4から、4:4:2に変えた試験です。

この試験では、夏肥重点施用のほうが夏肥施用後の葉中窒素濃度が高くなり、秋肥施用後も慣行と同等以上でした。翌年の着花数は慣行と同程度で、収穫時の酸度は高くなりました。一方で、糖度や着色は慣行より低くなっています。

資料では、この成果は技術者向けの参考情報とされており、糖度や着色の低下については、剪定や枝の管理を見直し、着花・着果量を確保することで対応するとされています。すぐに切り替える技術というより、「秋肥が遅れる前提で、1年の配分を組み替える」という発想があることを知っておくと、来年の計画を立てるときの選択肢が広がります。

春肥・夏肥の時期と量も、品種や作型によって異なります。今年の秋肥がどうだったかを記録しておくと、来年の春肥と夏肥を考える材料になります。

まとめ。収穫後に見ていく順番

  1. 品種と作型ごとに、秋肥の適期の目安を確認する
  2. 秋肥がまだの樹を把握し、成り疲れした樹と来年が表年の樹から優先する
  3. 適期を過ぎていても、やめずに施用する。12月中旬の施用でも根は吸収し、翌春の花と新葉に使われる(愛媛県の試験)
  4. 遅れた場合は、速効性の化成肥料、液肥やバイオスティミュラントに切り替える
  5. 樹勢が落ちた樹は、バイオスティミュラントなどの葉面散布で補う。ただし完全な施肥の代わりにはしない
  6. 雨が少ない年は、施肥とかん水をセットで考える。かん水が難しい園地は、施肥を雨の予報に合わせる
  7. 冬の落葉を防ぎ、蓄えた養分を守る
  8. 秋肥が毎年遅れる園地は、来年の施肥配分そのものを見直す
収穫後に見ていく、八つの確認項目

秋肥は「適期に入れる」ことが基本です。ただ、収穫やマルチの事情で遅れてしまう年は、どうしてもあります。

大切なのは、遅れたことであきらめないことです。遅れた秋肥にも、来年の花と新葉の材料としての役割は残っています。バイオスティミュラントの葉面散布や水の工夫などで、遅れた分を少しでも取り戻すことはできます。

今回の記事が、収穫後のみかんの樹を来年につなぐ管理を考える際の参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

【プロフィール】

・出身: 1963年 大分県生まれ
・学歴: 国学院大学 卒業

【職務経歴】

・1987年: 株式会社日本実業出版社 入社
・1998年:西日本産業(株)にて主に九州管内で農業資材の開発、営業を担当。
・2009年: フリーの農業記者として食や農に関するイベント、放送番組等の
企画制作に携わる。
・2021年: ファームテック株式会社 代表取締役 就任

【主な役職・活動】

・2010年: 食農コンソーシアム大分(大分県内の若手農業者団体)代表
・2021年:大分県立久住高原農業高等学校 学校評議委員、マイスターハイスクールCEO

【研究・セミナー実績】

・共同研究:ユズ果皮が持つ抗アレルギー能と隔年結果の改善(2009年:大分大学)

・セミナー講師:

「農で生きる・農で生かす」(2012年:大分大学)
「昨今の農業ブームについて考える」(2014年:大分県農商工連携センター)

【メディア事業】

・ラジオ: OBSラジオ「甲斐蓉子の教えて!農業」(2009年7月~)
・テレビ: OBSテレビ「Hadge Padge TV」(2021年4月~)

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